臨床検査技師 しばしん

本や論文の内容、個人的な意見・考察を投稿します

ストレスでハゲるメカニズムとは

ストレスでハゲるメカニズムとは

 

参考文献

Corticosterone inhibits GAS6 to govern hair follicle stem-cell quiescence | Nature

https://www.nature.com/articles/s41586-021-03417-2

 

f:id:siba-sin:20210619133756p:plain

 

 ストレスで白髪が増えたり、抜け毛が増えるという話は映画やアニメのシーンで見かることもありますが、その正確な理由について明らかになっていませんでした。しかし、nature誌にて、髪の毛の成長を停止させる主要なストレスホルモンを特定したという報告がありました。

 

論文の著者の一人であるハーバード大学のYa-Chieh Hsu氏は、「この研究ではストレスが実際に幹細胞の活性化を遅らせ、毛包幹細胞が組織を再生する頻度を根本的に変えることを発見しました」と語りました。

 まあ、ざっくり言えば、毛を産生する毛包には幹細胞が存在しますが、ストレスを与えると毛包の幹細胞は休止期間が長くなり、髪の成長が制限されるということです。

 

実験では、副腎皮質から産生されるコルチコステロンはストレスホルモンとして知られていますが、マウスにコルチコステロンを摂取させると、ケージの傾きやライトの点滅といった比較的無害なものにまでストレスを感じるようになり、毛の発育が止まったとのことです。また、コルチコステロンの発生源を外科的に取り除くとマウスの毛包は再び毛を産生するようになり、ストレスホルモンの発生源を外科的に取り除いた場合、幹細胞は休息期間なく毛を成長させたそうです。

 

同研究に携わったハーバード大学のSekyu Choi氏は幹細胞のコルチコステロンの受容体を取り出して、コルチコステロンが直接、幹細胞を調節しているか調べました。結果、コルチコステロンは毛包の下にある真皮細胞に作用していることが明らかになりましたということを語っています。

真皮細胞は毛包幹細胞を支え、栄養素の流れを制御するものですが、コルチコステロンは真皮細胞のGAS6の分泌を防ぐことで毛の成長を止めていることを明らかにしました。さらに、高コルチステロンレベルのマウスにGAS6を注入したところ、毛包幹細胞が活性化し、AXLと呼ばれるたんぱく質を介して発毛が促進されることが示されています。

 

この研究ではマウスのに対して行われたもので、人間も同じように作用しているかどうかは今後さらに検討する必要があります。

 

<ブログ著者の個人的感想>

コルチコステロンが幹細胞ではなく、真皮細胞に作用し間接的に幹細胞を調節しているという点が興味深いと思いました。