臨床検査技師 しばしん

本や論文の内容、個人的な意見・考察を投稿します

人はウーパールーパーのように再生することは可能なのだろうか?  

人はウーパールーパーのように再生することは可能なのだろうか?

 

参考文献

Axolotl Genome Slowly Yields Secrets of Limb Regrowth | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/axolotl-genome-slowly-yields-secrets-of-limb-regrowth-20180702/

 

f:id:siba-sin:20210623071528p:plain

ウーパールーパーは驚異の再生能力をもっており、これはウーパールーパーのもつ幹細胞によるものです。この再生メカニズムを人間と比較することによって将来的に人間に応用することができるのでは?と日夜、研究者が研究しています。

今回科学サイトのQuanta magazineがウーパールーパーの再生についての研究の現状をまとめていたのでブログに書いてみようと思います。

 

人間がけがを負った場合はマクロファージによって即座に傷跡が作られ組織の再生は行われません。一方で、ウーパールーパーではマクロファージが死細胞を取り込んだ後、幼胚の細胞集団である「芽体」が損傷した組織を再生させます。そのため、ウーパールーパーは切断された腕や心臓を再生することができます。

 

f:id:siba-sin:20210623071606p:plain

https://twitter.com/sotonami?lang=ja

 

 

ウーパールーパーのゲノムはどのように医療に役に立つのか>

ウーパールーパーのゲノムは320億塩基対で、ヒトゲノムの10倍以上あります。ドイツなどの国際研究チームがゲノムを解読しましたが、解読された生物のゲノムの中で最大であったそうです。

Tanaka氏は、四肢の再生において、人間にはないと思われる比較的数多くの遺伝子がウーパールーパーには見られると言っており、これらの遺伝子の調査は、再生能力の理解へと導くかもしれません。

興味深いことに、Monaghan氏によるとウーパールーパーの再生組織はガン細胞と似ている点が多いことから、ウーパールーパーの再生された四肢の組織環境が、どのようにして細胞をコントロールしているかを研究することで、ガン細胞の周囲の環境をコントロールし「通常通りに振る舞うこと」を強いることもできる可能性があるそうです。ただし、癌と幹細胞に関係性があることから、頻繁に再生させることが発がんのリスクを高める可能性があるとも考えられます。一方で、ハーバード大学医学大学院の准教授であるJessica Whited氏は「興味深いのは、ウーパールーパーは体を再生させてもガンになることがほとんどないということです」「一方で、人間は常にガンにかかっています」と述べました。

この点においては、1952年に科学者のCharles Breedis氏が500匹以上のイモリの腕に発ガン物質として知られるコールタールなどを注入するという実験を行いました。結果として500匹のうち腫瘍ができたのは2匹で、残りのほとんどは追加の腕をはやしたという反応を示しただけでした。

 

なぜ、多くの生物で進化の過程でウーパールーパーのような再生能力を失ってしまったのか?四肢の切断を余儀なくされた人の中には、神経繊維の成長がコントロールできずに神経腫という腫瘤ができてしまう人もいますが、これは古代生物が有していた再生能力の名残ではないかという見方もあるようです。これまでの研究から、我々の認識以上に人間は再能力を持っていると考えられており、いつの日か人間の体を適切な状態に保てば、四肢を再生出来る可能性が出るかもしれません。