不老不死になるための科学的戦略
不老不死になるための科学的戦略
参考文献
(How) should we pursue human longevity?
https://milan.cvitkovic.net/writing/longevity/
引用 ジョジョの奇妙な冒険 第2部 戦闘潮流
ジョジョの奇妙な冒険で登場したDioやカーズなどは不老不死の能力を手に入れた生物ですが、我々人間は果たして不老不死になれるのでしょうか?
機械学習で創薬を促進するPostEraの研究者であるMilan Cvitkovic氏が不老長寿を実現するためにどんな問題を解決しなければならないか、具体的に整理しました。
不老長寿を実現するためには老化の原因をまとめた上で、老化を食い止めるにはどのような手段があるのか検討する必要があります。
老化の原因
・核DNAの損傷
・幹細胞の枯渇
・老化した細胞の蓄積
・ミトコンドリアDNAの損傷の蓄積
・炎症
・染色体末端を保護する役目を持つテロメアの短縮
・タンパク質恒常性の損失
・アルツハイマー病の原因の一つとされる細胞外凝集体
・細胞の代謝や老化に関係しているとされるインスリン及びインスリン用成長因子シグナリングの減少
・エピジェネティックな変化
老化に対抗する技術
・自然突現変異/68%/非現実的
・生殖系列遺伝子治療/46%/非現実的
・食事法/32%/非現実的
・小分子薬剤/27%/現実的
・体細胞遺伝子治療/24%/現実的
・生物学的製剤/16%/現実的
・細胞療法/12%/現実的
*寿命を伸ばす要因/それによって延長されたマウスの寿命/人間への応用が現実的か
<老化研究の困難な点>
・動物実験の困難さ
例えば、内分泌疾患の影響で老化が遅いマウスの研究は、マウスの取り扱いが誤っていて早死にしてしまうケースが多かったことから、当初は「急速な老化に関連する研究」だとみなされていたという事例
・研究コスト
2009年~2018年までにアメリカ食品医薬品局(FDA)が承認した、医薬品の研究期間と研究費用を算定した2020年の研究では、「新薬の開発には10年の歳月と10億ドル(約1050億円)の費用がかかる」と推測されている。
<ブログ著者の感想>
仕事柄、幹細胞の培養をやっていいますが、やはり年齢が上がるほど幹細胞は分裂しずらくなる傾向があるので老化には関心がある今日この頃です。
個人的には老化と幹細胞、脳機能とを関連づけて今後も調べていく予定です。
ストレスでハゲるメカニズムとは
ストレスでハゲるメカニズムとは
参考文献
Corticosterone inhibits GAS6 to govern hair follicle stem-cell quiescence | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-021-03417-2
ストレスで白髪が増えたり、抜け毛が増えるという話は映画やアニメのシーンで見かることもありますが、その正確な理由について明らかになっていませんでした。しかし、nature誌にて、髪の毛の成長を停止させる主要なストレスホルモンを特定したという報告がありました。
論文の著者の一人であるハーバード大学のYa-Chieh Hsu氏は、「この研究ではストレスが実際に幹細胞の活性化を遅らせ、毛包幹細胞が組織を再生する頻度を根本的に変えることを発見しました」と語りました。
まあ、ざっくり言えば、毛を産生する毛包には幹細胞が存在しますが、ストレスを与えると毛包の幹細胞は休止期間が長くなり、髪の成長が制限されるということです。
実験では、副腎皮質から産生されるコルチコステロンはストレスホルモンとして知られていますが、マウスにコルチコステロンを摂取させると、ケージの傾きやライトの点滅といった比較的無害なものにまでストレスを感じるようになり、毛の発育が止まったとのことです。また、コルチコステロンの発生源を外科的に取り除くとマウスの毛包は再び毛を産生するようになり、ストレスホルモンの発生源を外科的に取り除いた場合、幹細胞は休息期間なく毛を成長させたそうです。
同研究に携わったハーバード大学のSekyu Choi氏は幹細胞のコルチコステロンの受容体を取り出して、コルチコステロンが直接、幹細胞を調節しているか調べました。結果、コルチコステロンは毛包の下にある真皮細胞に作用していることが明らかになりましたということを語っています。
真皮細胞は毛包幹細胞を支え、栄養素の流れを制御するものですが、コルチコステロンは真皮細胞のGAS6の分泌を防ぐことで毛の成長を止めていることを明らかにしました。さらに、高コルチステロンレベルのマウスにGAS6を注入したところ、毛包幹細胞が活性化し、AXLと呼ばれるたんぱく質を介して発毛が促進されることが示されています。
この研究ではマウスのに対して行われたもので、人間も同じように作用しているかどうかは今後さらに検討する必要があります。
<ブログ著者の個人的感想>
コルチコステロンが幹細胞ではなく、真皮細胞に作用し間接的に幹細胞を調節しているという点が興味深いと思いました。