臨床検査技師 しばしん

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新薬開発 rapamycin  ~不老不死をもとめて~

新薬開発 rapamycin  ~不老不死をもとめて~

 

参考文献

The forever young drug: Scientists make sick and ageing cells healthy again

https://www.dailymail.co.uk/health/article-2009665/The-forever-young-drug-Scientists-make-sick-ageing-cells-healthy-again.html

 

 

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Hayley Okinesさん 2011年 13歳

 

米国政府の健康研究所に所属し、ヒトゲノムを解読したCollins博士は、全身の老化が異常に進行する早老症疾患で、12歳までに老衰により命を落としてしまうことの多いハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の子どもたち3人の皮膚細胞を用いて「rapamycin」という薬品の効果を確かめるために実験を行いました。

 

Hayley Okinesさんは社会的には12歳ですが、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の影響で健常者の8倍の速度で老化が進行しているために12歳ごろにはおよそ96歳に相当する老化が進行しています。

このハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者の体内では、突然変異した有毒なタンパク質「progerin」が体中すべての細胞で増殖するために、急速な老化が引き起こされます。しかし、The journal science translational medicine誌にて、この患者に「rapamycin」を投与したところ、その有毒なタンパク質を細胞から追いやって、細胞を正常な状態にすることに成功。しかも、細胞自体の寿命も延びたということが報告されました。

 

Progerinは健常者の体にも微量に存在し、老化を引き起こす物質の一つと考えられており、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の患者と一般的な人の老化プロセスには共通項があるため、rapamycinの研究が進めば、老化を防ぎ寿命を延ばすことができる可能性があります。

 

rapamycinの成分はイースター島の土壌から発見されたバクテリアから精製されたもので、一般の患者にも移植の際に免疫系を抑えるために使われています。今後はrapamycinの研究が進み、一般向けの老化防止剤としての利用についても研究が進められるかもしれません。

 

<ブログ著者の感想>

ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群の一人であるSam Berns君のted talkを思い出しました。

neurogenesis.hatenablog.com